ネットショップを運営しようとすると問題になるのは個人情報の記載を迫られる、特定商取引法の電話番号や住所や氏名の表記義務だと思います。
個人事業主やフリーランスのような自営業の場合には、事務所の電話番号や住所はない人がほとんどなので、自宅の住所と電話番号を書かなければいけないという事になりますが、さすがにネット上に晒すのは多少不安もあるかと思います。
特定商取引法は義務なので、必ず守らないといけない法ですが、個人の場合にはどんな対処方法があるのかを徹底的に模索してみたいと思います。
特定商取引法の表記義務を確認してみると
「特定商取引法」は法律で決められている事項です。ネットショップの運営では販売価格や支払い方法や返品についての記載などの表記は当たり前だと思いますが、その他で、個人情報となりそうな部分は以下です。
- 事業者の氏名・名称
- 事業者の住所
- 事業者の電話番号
- 代表者氏名・責任者氏名
自宅の住所や電話番号をネット上に公開するのに抵抗がある人も多いよね
特定商取引法についての質問をしてみよう
特定商取引法に関する質問があった場合は各地域で事業者向けの相談できる窓口が用意されています。特定商取引法の法律についてわからないままにせずに聞いちゃう方が早いというわけですね。
経済産業局 | 電話番号 |
---|---|
北海道経済産業局 | 011(709)1792 |
東北経済産業局 | 022(221)4917 |
関東経済産業局 | 048(600)0405 |
中部経済産業局 | 052(951)2560 |
近畿経済産業局 | 06(6966)6027 |
中国経済産業局 | 082(224)5671 |
四国経済産業局 | 087(811)8526 |
九州経済産業局 | 092(482)5459 |
沖縄総合事務局経済産業部 | 098(866)1731 |
経済産業局に特定商取引法について電話問い合わせした結果
実際に経済産業局に記載された電話番号に問い合わせてみます。特定商取引法についての疑問点をメモして正しい情報を聞いてみたいと思います。
個人事業主でも電話番号の記載は必要か?
なるほど。個人事業主だからという概念はそもそもありません。販売事業者かどうかが重要な部分で、表記した上で何か問題が生じた時は、それはまた別の法律で対応していくわけです。
なるほど。ネットショップという形態ならばネット上での契約は絶対に避けられないので電話番号は必ず記載する事になりますね。
個人事業主でも住所の記載は必要か?
特定商取引法を見ていると住所の番地などを省略して掲載している人も見受けられますが、原則として住所の番地や部屋番号まで記載する必要があるという事ですね。
なるほど。実際に活動が行われている場所でないとダメだという事ですね。ただし、契約している場所という旨を表記して、問い合わせ時に正規の情報を遅延なく連絡できるならば利用も可能との事。
個人事業主でも氏名の記載は必要か?
なるほど。偽名はもちろん、ハンドルネームやローマ字などはダメという事ですね。時々源氏名を表記している特定商取引法のページを見かけますが別に本名の記載も必須だという事です。ただし、運営者と責任者が必ずしも同じではなくても良いとの事です。ふむふむ。
なるほど。「運営責任者:山田」などの省略もダメという事ですね。氏名表記の内容をまとめると以下の全てがダメだという事になります。
- (×) 運営責任者:山田
- (×) 運営責任者:Yamada Taro
- (×) 運営責任者:ヤマダタロウ
- (×) 運営責任者:ゴッド山田
電話番号・住所・氏名は特定商取引法から省略できるのか?
ここまで、特定商取引法の電話番号も住所も氏名も全て表記しないといけないと回答をもらったわけですが、あくまでも原則的な規定であって省略できるケースも用意されています。
消費者庁の特定商取引法ガイドによると以下のように定められていました。
広告の表示事項を省略できる場合
広告の態様は千差万別であり、広告スペース等もさまざまです。
したがって、これらの事項をすべて表示することは実態にそぐわない面があるので、消費者からの請求によって、これらの事項を記載した書面 (インターネット通信販売においては電子メールでもよい)を 「遅滞なく」提供することを広告に表示し、かつ、実際に請求があった場合に「遅滞なく」提供できるような措置を講じている場合には、 下の表の通り、広告の表示事項を一部省略することができることになっています。(法第11条ただし書き)
なお、ここでいう「遅滞なく」提供されることとは、販売方法、申込みの有効期限等の取引実態に即して、 申込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されることをいいます。 たとえば、インターネット・オークションにおいては、 通常、短期間の申込みの有効期限が設定されており、その直前に多数の者が競い合って申込みをすることも 多いため、 「遅滞なく」提供することは困難であると考えられます。
参考 通信販売|特定商取引法ガイド
この項目の要点をまとめると、以下のような条件を満たす時のみ、特定商取引法の一部を省略できるという事になります。
- 消費者からの請求によって、これらの事項を記載した電子メールを「遅滞なく」提供することを広告に表示する
- 実際に請求があった場合に「遅滞なく」提供できるような措置を講じる
- 「遅滞なく」とは、販売方法、申込みの有効期限等の取引実態に即して、申込みの意思決定に先立って十分な時間的余裕をもって提供されること
- 販売価格・送料その他消費者の負担する金額を全て表示する
この条件が満たした場合、販売業者の氏名(名称)、住所、電話番号を省略できるとされています。
特定商取引法の表示義務違反の罰則はあるのか?
特定商取引法を書かない事は表示義務違反ではありますが、罰則は用意されていません。
ただし、現状は罰則がないだけで購入者からの指摘があった場合などには、「業務改善指示」や「業務の停止」といった事を命ずる!と記載があるように、指摘が入る事はあるようです。
個人情報未記入(省略)の特定商取引法の書き方
ここまでわかった事を踏まえて、個人情報を省略した特定商取引法の書き方を考えてみましょう。利用するネットショップのシステムによっては省略した記述ができない場合もありますが利用できる場合には以下の特定商取引法サンプルを参考にしてみて下さい。
- 運営責任者:山田 太郎
- 事業所の所在地:東京都港区芝公園X-X-X-XXXX
- 電話番号:※電話番号はご請求時に遅延なく開示しております。
- 問い合わせ:info@example.com
- 運営責任者:山田 太郎
- 事業所の所在地:東京都港区芝公園X-X-X ※部屋番号はご請求時に遅延なく開示しております。
- 電話番号:XXX-XXXX-XXXX
- 問い合わせ:メールフォームはこちら
改善指示があった場合はこの限りではありませんが、遅延なく開示できるという場合には省略して表記できます。ただしその他の必要事項表記に漏れがあると義務違反になるので注意しましょう。
個人情報(電話番号・住所・氏名)を守る方法まとめ
ネットショップに特定商取引法を掲載すると、本名や電話番号や住所が公開される事になります。すると個人情報が思わぬ所で悪用されたり、スパムメールや嫌がらせといった被害が起こらないとも限りません。
特定商取引法の専用電話番号を用意する
楽天モバイルの050番号なら着信も発信もできて、645円/月~(楽天モバイル:料金ページ)というコスパです。
色々なアプリも複数利用できる事を考えると、もう一台スマホがあるのはかなり有利にネットショップ運営ができると思います。メールもショップ用に用意できますし、営業時間外は電源を切っておくことができます。
050アプリでは月額300円だとしてもプライベートのスマホに入れる事になるので、夜中に電話がなることもありますからね。もちろん特定商取引法にも安心して堂々と掲載できますし。
特定商取引法ページをインデックスさせない方法
特定商取引法を掲載しているページの<head></head>の間に検索エンジンには登録しないでほしいという命令文を記述できます。
このタグが記述されたページは検索エンジンには表示されなくなります。ページを公開すると同時に設定しておくことが望ましいですね。
特定商取引法のページを画像にする
特定商取引法を記載したページを画像化してしまう事で検索エンジンから文字列での検索に表示されないという方法です。
と…思うのですが、画像化して表記する方法はおすすめしません。なぜなら、現在では画像やPDFの文字列を識別して文字列検索できる技術が発達してきていますし、そもそもその画像自体の検索エンジン登録を制御しなければ完璧とは言えません。前述のnoindexタグと併用すると個人情報を守る上では効果的になると思います。
ネットショップは誰でも持てる時代
今までは法人でなければ持てなかったような決済システムやカートシステムが個人でもすぐに利用できる時代です。しかも無料で開設できるサービスも増えてきました。
無料ネットショップ開設で老舗の「BASE」 なんかになると一文無しの状態からショップが持ててしまうし、クレジットカード決済まで代行してくるので驚きます。
BASEだけで400,000店舗がすでに開設されているらしいから、フリーランスなら押さえておきたい所。ずっと買う専門だった私も自分のショップの売上で飯を食う事になるとは思いませんでしたよ。ええ。
まとめ
個人事業主やフリーランスにとっては、所在地は自宅ですし電話番号はプライベートの携帯電話という人も多いですよね。という事で今回は「特定商取引法の電話番号・住所・名前は個人事業主なら省略もできるから活用しよう」という結果でした。
ちなみに私はショップを開設する時は個人情報に楽天モバイルの番号を利用しているので、ちゃんと書いてしまいます派です。やっぱりそっちの方が圧倒的に売れるんですよ。
今時のネットショップは個人情報のリスクと信用の上手なバランスが鍵だと思います!
アイラブフリーランス!